演奏会『百⼈⼀⾸のための注釈』

Buongiorno a tutti!

7月31日(土)に、演奏会『百人一首のための注釈』が音楽の友ホールにて行われます。

アレッシオ・シルヴェストリン作曲『百人一首のための注釈』は、5-7-5-7-7という類稀で、コンパクトな韻律に捧げられています。貴族から武士の時代への転換期に、藤原定家によって編纂された『百人一首』は、ひとつの音楽的できごとの中で再発見されるでしょう。このあまりにも知られた百の詩歌が次から次へと躍動していく『百人一首のための注釈』は、始原にある複雑さをおびた儀式へとみなさまをいざないます。

 新しい「規範」が⽇常を包摂すると、「形式」はかえって防腐された社会とのコントラストの⾼まりの中で現前化し、⼈間的なものの抑えがたい昇華は、⾮依存的な抵抗のしるしとなるかもしれません。歴史は知覚へと差し向けられ、⽂化といわれる遺産の同⼀性は、新たな⽔平性において過去へと受⾁していくでしょう。
 ソプラノ、バリトン、アルトフルート、ヴィブラフォン、ピアノのための『百⼈⼀⾸のための注釈』は、2012年にアレッシオ・シルヴェストリンにより作曲され、2020年に改訂されました。『百⼈⼀⾸』の百の詩歌がひとつひとつ、ひとつの作品へとふたたび蒐集され、それらを嵌めこんでいた短歌という鋳型そのものがコンパイルされる過程は、現代との対話を宙づりにする⽇本的、歴史的節度をさらに凝縮する、隠喩的な含みになるでしょう。
 5 – 7 – 5 – 7 – 7というコンパクトなメトリックにもっぱら捧げられた『百⼈⼀⾸のための注釈』において、それに拮抗するのは、⼆項関係に還元できない三項関係からなるトリコルドという単⼀のオブジェクトがオクターブの軛を超えて運動するセリーの充溢です。トリコルドの順列組合せによって合成に合成を重ねる連鎖のフラクタル様の形式の中に、⾳楽的内容が発⽣します。形式と内容のこのような動的なアレンジメントの発⽣によって、⽿は始原の複雑さを「詠み/読み」、儀式の儀式性へと誘われます。それは、時間を貫く、⽂化/表出の変換と変容への呼びかけ、存在論的な瞑想です。⾃然の詩的な神秘は、抽象的な思考を超えて、可感で⼈間的な、もろもろの欲望の共振を震わせていくのです。

アレッシオ・シルヴェストリン

『百⼈⼀⾸のための注釈』
作曲・演出:アレッシオ・シルヴェストリン
指揮:夏⽥昌和
ソプラノ:⾜⽴歌⾳
バリトン:仁賀広⼤
アルトフルート:中村淳
ヴィブラフォン:須⾧竜平
ピアノ:⽥中翔⼀朗

「カルタ・インスタレーション・パフォーマンス」
出演:⼋嶋智⼈
書:藤森陽⼦

アレッシオ・シルヴェストリン Alessio Silvestrin

モナコ・プリンセス・グレース・クラシック・ダンス・アカデミー、ローザンヌ・ルードラ・ベジャールを奨学金で卒業。ベジャール・バレエ・ローザンヌ、リヨン国立オペラ・バレエ、ウィリアム・フォーサイス率いるフランクフルト・バレエ団にソロ・ダンサーおよび振付家として所属。フォーサイス・カンパニーにゲスト出演。一方、イタリア・ヴィチェンツァのアリッゴ・ペドロッロ音楽院でピアノを、モナコのレニエ三世音楽院でチェンバロを、イタリア・マニアーノの古楽コースではクラヴィコードを学ぶ。フランチェスコ・ヴァルダンブリーニに作曲を師事し、トリコルダーレ(Tricordale)音楽技法を学んだ後、独自に作曲における探求を続け、その過程で生まれた作品は自身の振付作品にもしばしば使用される。2015年、ピアノのための「凍れる音楽」、サンフランシスコで Audible Cities Composition Competition の最優秀賞を受賞(2017年大井浩明により日本初演)。2016年、ロワイヨモン財団の委嘱でピアノのための「三つの渦」を発表。同年、アンサンブル室町の演奏プログラムの中でチェンバロとフォルテピアノのための「31の短歌」を発表。2017年、ドイツ・キュルテンにてシュトックハウゼン講習に参加。ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドイツ・カールスルーエZKM、愛知芸術文化センター、Noism 01 から委嘱。 東京文化会館にて花柳流と共作。2019年パリ・オペラ座にて杉本博司演出の『鷹の井戸』を振付(NHKにて放送)。洗足学園音楽大学講師。

<インフォメーション>

『百⼈⼀⾸のための注釈』

主催:アレッシオ・シルヴェストリン

協⼒:アンサンブル室町

助成:公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団 アーツカウンシル東京

会場:⾳楽の友ホール

⽇程:2021年7⽉31⽇(⼟)

開場/開演:① 13:30/14:00 ② 17:30/18:00

チケット:⼀般 4,000円 / 学⽣ 2,500円(全席⾃由・税込)

お問い合わせ:Confetti(カンフェティ) 
http://confetti-web.com/alessio2021

電話 0120-240-540*通話料無料(受付時間 平⽇10:00~18:00 ※ オペレーター対応)

初演のためのクラウドファンディングを始めました。

詳しくはリンク先をご参照ください:

https://motion-gallery.net/projects/hyakunin_chushaku

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ポコラート世界展 「 偶然と、必然と、」ー障害のある人、ない人、アーティストの生の表現を世界に解き放つー

Buongiorno a tutti!

この度、千代田区とアーツ千代田 3331はポコラート事業10周年を記念し、世界22ヶ国の作家50名による展覧会、ポコラート世界展「偶然と、必然と、」ー障害のある人、ない人、アーティストの生の表現を世界に解き放つーを開催します。

本展では、世界22ヶ国から「美術」という枠にとどまらない創作物を集め、アーツ千代田 3331に展示します。多様な地域性や文化を反映しながらも、作者の内なるエネルギーが形となって現れた唯一無二の表現を一堂にご覧いただける機会です。

出展国(50音順):アメリカ合衆国、イギリス、イタリア、イラン、インドネシア、オーストリア、カナダ、キューバ、スイス、スウェーデン、チェコ、中国、ドイツ、ナミビア、日本、ニュージーランド、ブラジル、フランス、ベナン、ベルギー、ポーランド、モロッコ

本展の展示作品は、芸術文化人類学を専門とするキュレーターが約1年を費やして世界23都市で独自にリサーチし、キュレーションを行いました。海外から出展する35名の作家のうち、28名の創作が日本初公開となります。中でもキューバ出身の元数学者であり、ダンボールに独自の数式やキューバ革命の英雄などを描くカルロス・ハビエル・ガルシア・ウエルゴや、ナミビアで観光客向けの土産物として鳥のような様相をもつ「飛行機」を制作するイマニュエル・マペウの創作は文化施設での公開が世界初となります。

ご紹介する創作の中には、アール・ブリュット(*)やアウトサイダー・アート(*)といったカテゴリーに位置付けられるものもあります。本展ではそれらのカテゴリーに属する創作だけではなく、常識、偏見、社会的判断といったあらゆる既存の価値観から解き放たれた、時に常軌を逸した「生の表現」と出会うことができます。

イタリアからは、クルツィオ・ディ・ジョヴァンニ氏が参加します。

クルツィオ・ディ・ジョヴァンニ CURZIO DI GIOVANNI

金髪の少女/A girl with blond hair
2010
鉛筆、色鉛筆、紙/Pencil, colored pencil, paper
34×24cm
photo: Olivier Laffely, Lausanne

1957年ロンバルディア州ローディ生まれ。器質性疾患による発達の遅れで長きにわたり精神医療施設に通い、1979年パヴィア近郊の病院に入院する。入院後、蒐集を始めたディ・ジョヴァンニは、色々なものをポケットやかばんに保管し、決して目を離さない。絵に対して大きな興味を示した彼は、2001年以降病院近くのアトリエで自由に絵を描き、様々な作品を制作している。彼の絵がしわくちゃに丸められ、ポケットに隠され、彼と常に行動を共にすることは、彼と彼の作品の間のきずなを証明するかのようだ。動物や人物の写真からインスピレーションを受け、彼にとって重要な要素のみを残して描く。はっきりとした線が形の輪郭を明確にする様子は、まるでモザイクのようであり、その「小片」は色鉛筆により塗りつぶされる。デフォルメされた顔や体の形は、しばしば白のまま残される背景からくっきりと浮かび出る。

* アール・ブリュット(フランス)

フランス人の画家、ジャン・デュビュッフェが考えた造語。「ブリュット」はフランス語で「加工していない」「ありのままの」という意味で芸術でいうと「アートに加工を施していない」というニュアンスになります。精神病患者、受刑者、子ども、民俗芸術や交霊術によるアフリカやオセアニアの人たちの作品など、専門的な美術教育を受けない人びとによる表現を指します。

* アウトサイダー・アート(イギリス)

1972年、「アール・ブリュット」をイギリスの美術批評家、ロジャー・カーディナルが訳したもの。またこれ以前には、アメリカの社会学者であるハワード・S.ベッカーがアーティストやミュージシャンの、社会から逸脱した行動を論じた「アウトサイダーズ」(1963年)という論文を発表しており、いわゆる美術界の主流には影響されずに独自に生み出される表現を指して使われます。

【ポコラートとは?】

ポコラート(POCORART)とはPlace of “Core+Relation ART”。障害の有無に関わらず人々が出会い相互に影響し合う場所であり、その場を作っていく行為を示す名称です。

詳しくはこちら:https://pocorart.3331.jp/about/

<インフォメーション>

展覧会名:ポコラート世界展 「 偶然と、必然と、」ー障害のある人、ない人、アーティストの生の表現を世界に解き放つー

会  期:2021年7月16日(金)〜9月5日(日) 会期中無休

開場時間:11:00〜18:00 入場は17:30まで

会  場:アーツ千代田 3331  1階 メインギャラリー 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 旧練成中学校

料  金:800円 65歳以上は500円。中学生以下・千代田区民は身分証のご提示で無料。 障害者手帳をお持ちの方とその付添の方1名は無料。

主  催:千代田区、アーツ千代田 3331

協  力:スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団、オーストリア文化フォーラム東京

特別協賛:中外製薬株式会社

協  賛:三菱地所株式会社

後  援:アメリカ大使館、イタリア文化会館、(一財)日伯経済文化協会(ANBEC)、一般社団法人千代田区観光協会、カナダ大使館、在日スイス大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、スウェーデン大使館、チェコセンター東京、チェコ共和国大使館、駐日イタリア大使館、駐日キューバ共和国大使館、ドイツ連邦共和国大使館、ニュージーランド大使館、ブラジル大使館、ブリティッシュ・カウンシル、ベルギー王国フランス語共同体政府国際交流振興庁(WBI)、べルギー大使館、ポーランド広報文化センター、モロッコ王国大使館

特設サイト:https://pocorart.3331.jp/world2021/

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