【本の魅力再発見!】『恋するトリエステ』

イタリア文化会館では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置に伴う休校、テレワーク、外出自粛により在宅で過ごす方に向け、毎週水曜日スタッフがお勧めのイタリア文学を紹介します。 今日皆さんに紹介するのは、 ヘレナ・ヤネチェク の『恋するトリエステ』(橋本 勝雄 訳 、イタリア現代文学アンソロジー『どこか、安心できる場所で』国書刊行会、2019年 所収)です。

この物語は、たった12ページしかない。本当に一瞬だ。

それなのに、こうも私に強烈な印象を残し、読んだ後もじわりじわりと私の心に居残り続ける。

『恋するトリエステ』を読んでまず思うこと。それは、読書という行為は、本を実際に手にとって読むことだけを指すのではない、ということだ。

この物語は、あっという間に終わってしまう。なぜこれだけ短くできるのか、というと、おそらく誰もが見聞きしたことのある話に似ているからだろう。街に新顔がやってきて、色恋沙汰を引き起こす。それはよくあるいつもの噂話であり、ときには自分が話の中心であるかもしれない。

しかし、不意を突かれるのだ。この感覚は身に覚えがある。アントニオ・タブッキの『逆さまゲーム』だ。読者のミスリードを誘うような仕掛けが施された短編集である。タブッキの場合、最後までその尻尾をつかませないで、あたかも狐につままされたかのような気分になることもあるが、ヤネチェクは私たちをその手にぎゅっと掴んで放さない。私たちは、読み終えたあともこの物語について考え続けざるを得ない。

また、橋本氏による翻訳の切れ味が、このトラップをより効果的にしている。物語の展開に応じてトーンを見事に使い分けることによって、場面場面のイメージを最大限に膨らませ、物語自体の短さに釣り合わないほどの読み応えを与えてくれている。

この世界で他者と共生していくには、想像力が必要だ。感情移入ではなく、その人が置かれている状況を理解しようとする絶え間ない努力。どんな人にも、彼ら/彼女らの暮らしがある。たとえニュースの一面を飾るような人物でも、他人の見えないところには、その人の日常やストーリー、つまり「個」がある。

しかし、いつでもどこでも同じなんだ、と油断していると突如それは訪れる。災害というのはいつもそうだ。その渦中にあるとき、人は自分の「個」に必死にしがみつこうとする。だが災害は、差別的であれ、無差別的であれ、そうした「個」を瞬く間に押しつぶされてしまう。ヤネチェクは、想像力を発揮して、そうして押しつぶされてしまった「個」を回復しているのだ。

舞台は1937年、トリエステ。「21世紀イタリア短編アンソロジー」である本著において、なぜこの舞台設定なのか。いつの時代でも起きることは同じだからだ。現に世界が大きな困難に直面している今、この物語を読むことは、我々にとって大きな意味がある。

それなのに、こうも私に強烈な印象を残し、読んだ後もじわりじわりと私の心に居残り続ける。

ヘレナ・ヤネチェク

ヘレナ・ヤネチェクは、1964年にドイツのミュンヘンでポーランド系ユダヤ人の両親のもとに生まれた。30年以上イタリアに在住しながら、イタリア語で作家活動を行なっている。報道写真家ロバート・キャパのパートナーであり、スペイン内戦で命を落としたユダヤ人女性写真家ゲルダ・タローを描いたノンフィクション・ノベルLa ragazza con la Leica(2017年)でイタリア文学界最高の賞、ストレーガ賞を獲得。イタリア語が母国語でない作家による初の受賞ということでも注目を浴びた。

(H.)

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【本の魅力再発見!】『回復』

イタリア文化会館では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置に伴う休校、テレワーク、外出自粛により在宅で過ごす方に向け、毎週水曜日スタッフがお勧めのイタリア文学を紹介します。 今日皆さんに紹介するのは、ヴィオラ ・ディ・グラードの『回復』( 越前 貴美子 訳 、イタリア現代文学アンソロジー『どこか、安心できる場所で』(国書刊行会、2019年) 所収)です。

醜く静かなるものとの邂逅。

薬物依存症だった主人公。
無菌状態の病室での解毒期間を終え、ロンドンにあるフラットで新たな生活を始める。
かつて市営住宅だった家を改修し、新しい家具で満たされたフラット。それでもなお傾いたままの床。仕事中は、なるべく考えずにすむように、とても複雑なプロジェクトで頭をいっぱいにしている。頼りにしていた姉からは、どうも避けられているようだ。
薬物依存であったことは、主人公にとってそれほど大きな問題ではなかった。それよりも、他者から向けられる情けが、彼女のプライドを傷つけていた。

そんな主人公のもとへ、ある日、不可思議な「男」が訪ねてくる。醜く、すがりつくような眼差しで主人公を見るが、何も語らない裸の高齢の「男」。しかもこの「男」には翼がついている-。
「男」の放つ異臭が今にも漂ってきそうな描写に、「いったいどこへ向かっているのだろう?」と読みながらハラハラとした。この作品の印象を形容するなら「ネバネバした」とか、「生々しい」、「薄暗い」といった表現になるだろうか。それでも不思議と読後の心は軽やかである。

混沌とした悩みの中で身動きが取れなくなってしまっていたのが、ある時ふと雲が晴れたように身体が軽くなり、「自分は大丈夫」と思った記憶が、大なり小なり誰にでもあるのではないだろうか。この作品を読んで、あの頃自分を救ったものはなんだったのか、今となってはかなり薄れてしまったいくつかの記憶に思いを馳せた。

バランスを崩しそうになっている人、あるいはかつてそういう記憶のある人にぜひ読んでみてほしい作品。

ヴィオラ・ディ・グラード

1987年、シチリア州カターニア生まれ。トリノ大学で日本語、中国語を学んだのち、ロンドン大学で東アジア哲学を専攻する。現在はロンドンに在住。

2011年、23歳で発表したデビュー作『アクリル70%、ウール30%』が、《カンピエッロ賞》新人賞、《ラパッロ=カリージェ賞》新人賞を受賞、《ストレーガ賞》の最終候補にもなり、一躍注目を浴びる。次いで発表した、自殺した青年の死後の世界を描いた小説『くぼんだ心臓』(2013)が高く評価され、英訳が数々の賞にノミネートされる。近未来の日本を舞台にした『鉄の子供たち』(2016)、放射能汚染で立ち入り禁止となったシベリアの村での恋愛模様を描く『空の炎』(2019)など、次々に話題作を発表している。

(Ts.)

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【本の魅力再発見!】『いいなづけ』

イタリア文化会館では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置に伴う休校、テレワーク、外出自粛により在宅で過ごす方に向け、毎週水曜日スタッフがお勧めのイタリア文学を紹介します。 今日皆さんに紹介するのは、アレッサンドロ・マンゾーニの傑作『いいなづけ』です。

アレッサンドロ・マンゾーニの『いいなづけ』は、1628年から1630年のスペインに統治されたロンバルディアを舞台とした、イタリアでは有名な歴史小説です。イタリア文学最初の歴史小説であるこの作品は、イタリア文学にとってのマイルストーンであるだけでなく、まさに現代イタリア語誕生の礎を築いたと言っても過言ではありません。さらに、登場人物に、貴族ではなく一般庶民を描いた小説として、初めて人気を博しました。

【あらすじ】

舞台は1628年から1630年、スペイン支配下のロンバルディア。
二人の主人公、ルチーアとレンツォはいいなづけ。しかし、彼らの結婚を執り行うドン・アボンディオ司祭は、その挙式を禁じられる。ルチーアに目をかけた領主ドン・ロドリゴが、レンツォとの結婚を阻止したのだ。
レンツォとルチーアはいくつかの浮き沈みののち、止むを得ず故郷を離れる。ルチーアはモンツァの修道院に、レンツォはミラノに逃げ延びる。
ルチーアは、モンツァの修道女ジェルトゥルーデの庇護を受け、一方レンツォは、ミラノでパンの価格高騰に反対する民衆蜂起に巻き込まれてしまう。
そしてドン・ロドリゴは、ジェルトゥルーデの協力を得てルチーアを悪党インノミナートに誘拐させ、自身の城に連れ去る。しかしその夜、激しい良心の呵責に苛まれたインノミナートは改心し、ルチーアを逃し、彼女を二人の友人に委ねる。
ちょうどこの頃、イタリアに南下してきた傭兵師団ランツクネヒトにより、イタリア中にペストが蔓延する。ルチーアの母アニェーゼとドン・アボンディオ司祭らは、慈愛に満ちた心を持つようになったインノミナートの城に避難する。一方レンツォは、ドン・ロドリゴと同じくペストに罹ってしまう。しかいレンツォは治癒するも、ドン・ロドリゴは帰らぬ人となる。
若い二人は、過酷な試練を乗り越え再会を果たし、無事結婚式を挙げる。

***********

新型コロナウイルスの感染拡大による休校措置に際して、ミラノにあるヴォルタ高校校長のドメニコ・スキラーチェ先生が生徒宛てに書いた手紙の中で、『いいなづけ』に描かれるペストの描写と現在私たちが置かれている状況を比べながら、生徒たちに、この新たな“ペスト”が人々の関係性まで毒してしまわぬよう意識して行動することを呼びかけました。この手紙は海を越えて日本でも話題になり、新聞やメディアでも取り上げられ、マンゾーニの『いいなづけ』は、日本で再び注目を浴びました。

家にいる時間を利用して、皆さんもこの機会に『いいなづけ』を読んでみませんか?

日本語版はこちら:

いいなづけ
(河出文庫、2006年)

いいなづけ
17世紀ミラーノの物語
(平川祐弘訳、河出文庫、2006年)
いいなづけ 上
いいなづけ 中
いいなづけ 下

ウンベルト・エーコがこども向けに書きかえたものもあります。
イタリア語で読むウンベルト・エーコの『いいなづけ』
(白崎 容子訳、NHK出版、2018年)

また、コミック版シリーズ『愛のちかい』(絶版)も、イタリア文化会館図書館に全巻所蔵しています。図書館が再開したあかつきにはこちらも是非!
愛のちかい 
(藍真理人、女子パウロ会、1984年)

(H.)

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ちょっぴりイタリア・オペラ〜有名なアリアの内容を知ろう ドニゼッティ 《愛の妙薬》

ドニゼッティ 《愛の妙薬》第2幕よりネモリーノのロマンツァ*「人知れぬ涙」

Donizetti : L’ELISIR D’AMORE  Atto secondo (Nemorino) “Una furtiva lagrima”

今回はテノールの代表的な一曲、ガエターノ・ドニゼッティ (1797-1848)が作曲した《愛の妙薬》から、「人知れぬ涙」をお届けします。

純朴で内気な村の青年ネモリーノは、農園経営者であるアディーナに恋をしています。ネモリーノはなんとか彼女を振り向かせようと、村に巡ってきた怪しい旅の薬売りのドゥルカマーラから、「これは恋に効く“愛の妙薬”だ」と安ワインを売りつけられては、それを信じて飲む始末。酔っぱらった勢いでなんとか彼女に恋心を告白しようとしますが、恋敵の将校ベルコーレの出現もあって、ネモリーノの行動は空回りするばかりで、なかなかうまくいきません。

実はネモリーノのことを憎からず思っているアディーナなのですが、はっきりしない彼の態度に業を煮やして、言い寄ってきたベルコーレと結婚すると言い出します。こちらはこちらで、相当な意地っ張り。

このドタバタ喜劇の終盤で、ネモリーノは、彼に金持ちの伯父さんの遺産が入ることを知った村娘たちから、突然チヤホヤされます。それをネモリーノは「愛の妙薬の効果だ!」とノーテンキに喜んでいます。

そんな様子を遠くから見てアディーナがひそかに涙を流していたのに気がついたネモリーノが、恋の成就が近いことを感じて歌うのが、この有名なロマンツァです。

そしてふたりがめでたく結ばれて、このオペラはハッピーエンドで終わります。

*ロマンツァRomanza:この時代のオペラでは、叙情的、感傷的な歌詞とメロディによる曲を作曲家自身が「アリア」ではなく「ロマンツァ」と記載している。

Una furtiva lagrima negli occhi suoi spuntò:

彼女の目からひそやかな涙がこぼれた

quelle festose giovani invidiar sembrò.

あの賑やかに騒ぐ娘たちを羨んでいるように、僕には思えた

Che più cercando io vo?

それ以上僕は何を望むというんだ?

M’ama, lo vedo.

彼女は僕のことを愛しているんだ、間違いない

Un solo istante i palpiti del suo bel cor sentir!

ほんの一瞬でも、彼女の純粋な心のときめきを聞くことができたら!

I miei sospir confondere per poco a’ suoi sospir!

僕のため息が、ちょっとでも彼女のため息と一緒になれたら!

Cielo, si può morir;

神様、死んだっていいです

di più non chiedo.

これ以上のことを僕は願いません

Si può morir d’amor!

愛のためなら、死ぬことだってできます!

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Filed under: オペラの世界 — イタリア文化会館東京 11:11

この緊急事態の当初から、イタリアの多くの有名ブランドがその生産ラインを転換し、Covid-19に立ち向かう病院や国に協力しています。

『 この世界にこんな国が他にあるか、みんな教えてくれ。アルマーニの使い捨てガウン、フェラーリの呼吸器、グッチのマスク、ラマゾッティの消毒液にブルガリのハンドジェルを使っている国が。 』

この緊急事態の当初から、イタリアの多くの有名ブランドがその生産ラインを転換し、Covid-19に立ち向かう病院や国に協力しています。

プラダ、フェラーリ、グッチ、ブルガリ…。これらの企業が、使い捨て医療用ガウンや防護服、マスク、人工呼吸器などを生産するようになったのです。

180ものファッションブランドが協力し、200万枚のマスクを生産しました。プラダは先週、トスカーナ州からの要請により、ペルージャのモントーネ工場にて8万枚の医療用ガウンと11万枚のマスクを生産し、州の医療従事者に届けました。エルマンノ・シェルヴィーノのトニ・シェルヴィーノ代表取締役は、自社のテーラーたちの労働体制を「スマートワーキング」にシフトしました。社の担当員が毎日何メートルもの生地やゴム、ワイヤーを従業員の自宅に配達し、すでに仕上がっているトスカーナ州の保健局向けの製品を引き取る体制です。ジョルジョ・アルマーニは、200万ユーロを病院に寄付したのち、全ての自社工場を医療従事者のための使い捨てガウン製造にシフトしました。ヴェローナのカルツェドニアグループは、いくつかの自社工場をマスクとガウンの生産に切り替えました。

消毒用ジェルの生産支援に乗り出したところもあります。ブルガリは化粧品関係の従業員を、1日6000本の手指用消毒液の生産に充てることを発表しました。レルボラリオとLVHMも同様の体制をとっており、さらに蒸留酒の酒造組合であるAssodistilは、アルコールの供給確保に貢献するとしています。協力する多くの蒸留所の中、ラマゾッティは手指用消毒液のボトルに、自社のアマーロのラベルと同じようなラベルを付けました。

FCAとフェラーリは現在、人工呼吸器を製造しています。FCAは中国にあるグループ工場の一つをトータルフェイスマスクの生産に充てています。

参照:
https://www.ilfattoquotidiano.it/2020/03/26/coronavirus-da-prada-e-gucci-a-fca-e-ferrari-tutte-le-aziende-italiane-che-riconvertono-la-produzione-per-fare-mascherine-e-ventilatori/5747676/

https://www.ilsole24ore.com/art/armani-produce-camici-herno-mascherine-gucci-lancia-crowdfunding-intesa-sanpaolo-AD7zXAG

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Dall’inizio dell’emergenza, molti famosi brand italiani stanno riconvertendo la loro produzione per aiutare gli ospedali e il Paese a fronteggiare il Covid-19. 

Prada, Ferrari, Gucci, Bulgari… Ecco le imprese italiane che hanno trasformato la produzione a beneficio di camici, dispositivi di protezione, ventilatori per la rianimazione.

180 case di moda hanno unito gli sforzi per produrre 2 milioni di mascherine. Prada, su richiesta della Regione Toscana, ha avviato nello stabilimento di Montone (Perugia) la produzione di 80mila camici e 110mila mascherine da destinare al personale sanitario della Regione. Toni Scervino, amministratore delegato della maison Ermanno Scervino, ha messo in “smartworking” le sue sarte: tutti i giorni gli incaricati dell’azienda portano metri di tessuto, elastici e ferretti a casa delle dipendenti e ritirano i dispositivi già realizzati, destinati alle aziende sanitarie della Toscana. Giorgio Armani, dopo aver donato 2 milioni di euro agli ospedali, ha dato il via alla conversione di tutti i propri stabilimenti produttivi per realizzare camici monouso destinati alla protezione individuale degli operatori sanitari. Il gruppo veronese Calzedonia ha riconvertito alcuni dei propri stabilimenti alla produzione di mascherine e camici.

Arrivano i rinforzi anche per la produzione di gel igienizzante: Bulgari ha annunciato di destinare i suoi laboratori cosmetici per la produzione di 6mila flaconi di disinfettanti mani al giorno, così come L’Erbolario e il colosso del lusso LVMH, mentre l’associazione dei produttori di distillati, Assodistil, contribuirà a garantire le forniture di alcol. Tra le varie aziende coinvolte la distilleria Ramazzotti, che ha creato un disinfettante mani che riprende l’etichetta del suo storico amaro.

Fca e Ferrari ora producono ventilatori. Fca riconvertirà inoltre uno stabilimento del gruppo in Cina per produrre mascherine facciali.

Fonti:

https://www.ilfattoquotidiano.it/2020/03/26/coronavirus-da-prada-e-gucci-a-fca-e-ferrari-tutte-le-aziende-italiane-che-riconvertono-la-produzione-per-fare-mascherine-e-ventilatori/5747676/

https://www.ilsole24ore.com/art/armani-produce-camici-herno-mascherine-gucci-lancia-crowdfunding-intesa-sanpaolo-AD7zXAG

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Filed under: Storie italiane イタリアの小さな物語 — イタリア文化会館東京 11:00

【本の魅力再発見!】『パパの電話を待ちながら』

イタリア文化会館では、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置に伴う休校、テレワーク、外出自粛により在宅で過ごす方に向け、毎週水曜日スタッフがお勧めのイタリア文学を紹介します。
 今日皆さんに紹介するのは、イタリアが誇る児童文学者でジャーナリスト、そして教育者、ジャンニ・ロダーリの短篇集『パパの電話を待ちながら』(内田洋子訳、2009、講談社)です。

『パパの電話を待ちながら』Favole al Telefono
(内田洋子訳、講談社、2009年)

「イタリアの本好きもまたそうでない人も、一度は読んだことがある作家。それが、ジャンニ・ロダーリである。」(訳者あとがきより)

ビアンキさんは、月曜日から土曜日まで、毎日イタリア中を忙しく飛び回るセールスマン。『パパの電話を待ちながら』は、そんなビアンキさんが、毎晩9時きっかりに、北イタリアの自宅で待つ幼い娘に電話で聞かせてあげた、色々なお話を集めた短篇集です。

あちこちにすぐコロリと落っこちてしまうミニサイズの女の子、自分の体のパーツをどこかに忘れてきてばかりいる男の子、透明人間トニーノ、宇宙ヒヨコ…楽しいキャラクターの数々に、お菓子や乗り物、王様、海水浴、宇宙、遠い異国の地など、子供が大好きな物や場所や事件が次々と登場します。

ひっくり返るようなお話に、ほのぼのとしたお話、寓意に満ちたお話、思わず笑いが込み上げるお話。重たいお話や、オチのない「宙ぶらりんなお話」も。児童向けの易しく明快な言葉遣いに、一話2~3ページほどの短さでどんどん読み進められますが、童話らしいシュールな味わいは、くせになるかも。一度でもロダーリを読んだことがある方ならご存じの通り、日本の童話とは一味違った独特のユーモアと洒落が光ります。

また、素晴らしいのは、非常識と言われそうなことでも否定されないことでしょう。あとがきでも言及されているように、「間違いや、人と違うということをとがめない」のです。イタリアの日常というのは、日本人には想像もつかないような出来事に満ちていますが、その面白みの源であるイタリア的発想力や独自のセンスは、子どもの頃からこうしたお話を通じて養われるのかもしれませんね。

色とりどりの宝物が輝くおもちゃ箱のような一冊。春の日差しと風のなか、軽やかで楽しい読書はいかがでしょうか。
(T.)

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Filed under: Staff Blog,お知らせ — イタリア文化会館東京 13:59

ジャンニ・ロダーリ生誕100周年

Buongiorno a tutti!

2020年は、児童文学作家ジャンニ・ロダーリ(1920-1980)の生誕100周年にあたります。

この特別な年を祝うため、イタリアでは各種出版、展覧会等、数多くのイベントが行われます。彼の作品一覧や各イベントの詳細については、特設サイトでご確認いただけます(100giannirodari.com/ サイトはイタリア語)。

ジャンニ・ロダーリ

生誕100周年と聞いて、思わず耳を疑った方もいらっしゃるかもしれません。というのも、ロダーリはここ何十年にもわたって常に話題の中心にあり、彼の著作の非凡かつ素朴なたたずまいには、いまもって私たちをはっとさせる新鮮さがあるからです。

ジャンニ・ロダーリは、1920年にピエモンテ州のオメーニャ(Omegna)に生まれました。17歳で教員資格を取得し、教員として何年か働いたのち、第二次世界大戦終戦を機にジャーナリズムの世界に飛び込みました。そこでロダーリは、アントニオ・グラムシが創設した『ウニタ(L’Unità)』をはじめ、『ピオニエーレ(Pioniere)』『パエーゼ・セーラ(Paese Sera)』など、いくつもの新聞に関わるようになりました。1950年代から発表しはじめた子ども向けの作品はたちまち人気を博し、1970年には国際アンデルセン賞を受賞。児童文学界において不動の地位を獲得しました。

また60年代から70年代にかけて、ロダーリは各地の学校にて教師や司書、児童やその親との交流を重ねており、その成果は『ファンタジーの文法(Grammatica della fantasia)』として出版され、子どもの文学教育に携わる人々の指南書として今なお高い評価を得ています。

「ファンタジーの文法」、筑摩書房 1978(窪田富男 訳)

イタリア文化会館図書室でも、ロダーリの代表作である『チポリーノの冒険(Le avventure di Cipollino)』(1951)、『パパの電話を待ちながら(Favole al telefono)』(1962)、 『二度生きたランベルト(C’era due volte il barone Lamberto)』(1978)をはじめ、数々の作品を手に取ることができます。イタリア語版の蔵書もありますので、原文の味わいを楽しんでみるのも一興ですね。イタリア語版の多くを彩る、ブルーノ・ムナーリの秀逸な装丁や挿絵も、一見の価値ありです。

「チポリーノの冒険」、岩波書店 2010 (関口英子 訳)
「パパの電話を待ちながら」、
講談社文庫 2009(内田洋子 訳)

みなさんもぜひこの機会に、イタリアが誇る児童文学作家の作品に触れてみてはいかがでしょうか?

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Filed under: イタリアイベント情報 — イタリア文化会館東京 11:00

3月25日はダンテの日(Dantedì)!

Buongiorno a tutti!

毎年3月25日はダンテの日(Dantedì:「ダンテディ」)として、この偉大な人物にちなんだ各種イベントが執り行われます。ダンテの没後700年を来年に控え、今年のダンテディはより一層の盛り上がりを見せています。

ダンテ・アリギエーリ(1265-1321)は、ルネサンス期の先駆者である政治家・詩人で、現代イタリア語の父ともいわれています。1321年に完成した彼の代表作『神曲』は、イタリア文学の最高傑作であると同時に、世界に二つとない偉大な作品とされ、今日まで読み継がれています。

ミケリーノ《ダンテ、『神曲』の詩人》フィレンツェ、
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂

ところで、ダンテが生まれたのは1265年5月21日から6月21日の間、亡くなったのは1321年の9月13日から14日にかけてといわれています。それではなぜ3月25日がダンテの日として祝われるのでしょうか?

かの『神曲』に描かれる、この偉大な詩人の旅が行われたのは、1300年と推測されています。さらに、作品の中にちりばめられている手がかりを集めると、その日付まで絞り込むことができるのです。

例えば、「地獄篇」第1歌第37行から40行にかけて、ダンテは、一頭の豹が目の前に立ちはだかった際の状況をこう描いています。

時は朝のはじまる暁、
太陽は、神の愛がはじめてあの美しい宇宙を
動かした時にもともにあったあの星座を従えて
昇ろうとしていた。

「神の愛がはじめて(…)宇宙を動かした時」とは、天地創造の時を指します。そして、天地創造がなされた時、季節は春で、太陽は牡羊座とともにあったとされています。よって、ここに言及される「星座」は牡羊座、これは春分の日の朝を描写したものであると推測できるのです。

また、中世ヨーロッパでは、一年の始まりは現在のように1月1日からではなく、キリストの生誕にちなむ12月25日とする場合と、キリストの受胎告知にちなむ3月25日とする場合がありました。ダンテが生きた当時のトスカーナでは、一年の最初の日は3月25日とされていました。

これらをはじめとする多くのヒントをもとに、諸説ありますが、ダンテが「暗い森の中をさまよっている」自分に気づいたのは、1300年3月25日とされています。

地獄篇の冒頭。気が付くと深い森の中におり、
恐怖にかられるダンテ。ギュスターヴ・ドレ による挿絵

「ダンテの日」3月25日とは、彼の誕生日や命日ではなく、現代でも我々を驚嘆させ続ける、あの旅の始まりの日だったのです。

<参考文献>
ダンテ・アリギエリ/原基晶訳『神曲 地獄篇』講談社、2014。
La dante.it “Il viaggio di Dante

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『デカメロン2020 緊急非常事態宣言が発動されたイタリアを、イタリアの若者が語る、描く、見つめる、歌う』

『苦難や問題からは、かならず新しい解決や発明が生まれます。しっかり構えて、先を見る。長い歴史の中でイタリア半島が培ってきた、生きるための強い精神力と他を思いやる気持ちをリアルタイムでご紹介できればと思います。』

内田洋子
参加している大勢の若者達
2020年3月18日

©MiBACT

Buongiorno a tutti!

『デカメロン』(古代ギリシャ語で「十日の(物語)」の意)は、1349年から1351年にかけてジョヴァンニ・ボッカチオによって書かれた、全100話からなる物語集です。10人の若い男女が、ペストの危機から逃れるためにフィレンツェ郊外に籠り、10日間に渡って10話ずつ物語を語り合います。

ボッカチオは前書きの中で、何年にも渡ってペストが蔓延した当時の惨状を描き、当時大切にされていた社会規範や慣習が、この感染症の大流行によって破壊し尽された様子を語っています。その一方で、10人の若い男女を通じて、もう一つの事実、つまり人類は己の力と知性によってどんな状況をも切り抜けられる、ということを示してもいます。

この傑作に着想を得て、イタリア在住のジャーナリスト内田洋子氏が、方丈社(東京)のHPにて『デカメロン2020©︎』と題した新連載を開始しました。現在イタリア各地で自宅待機を余儀なくされている若者たちの声が集められています。

ヴェネツィア、ミラノ、トリノ、ボローニャ、ローマ、モンテレッジョ、シチリア、サルデーニャ……。2020年、現代のイタリアにおいて、疫病から逃れた若い人々はどのように日々を過ごすのか。古典『デカメロン』の「リアル・イタリア版」です。

コラムURL:hojosha.co.jp/free/decameron2020_02

内田洋子 ジャーナリスト、文筆家、翻訳家
イタリア在住。通信社ウーノ・アソシエイツ代表を務め、イタリアに関する記事や著作を数多く発表。最近の著書に『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社、2018年)、『もうひとつのモンテレッジョの物語』(方丈社、2019年)。2011年、『ジーノの家 イタリア10景』(文春文庫、2011年)で日本エッセイスト・クラブ賞及び講談社エッセイ賞受賞。2019年、ウンベルト・アニェッリ新聞雑誌賞受賞。

Il Decamerone (dal greco antico “[opera] di dieci giorni”), è una raccolta di cento racconti scritta da Giovanni Boccaccio tra il 1349 e il 1351. La cornice della raccolta narra di un gruppo di ragazzi che per dieci giorni si trattengono fuori da Firenze per sfuggire alla peste nera. A turno, per passare il tempo, si raccontano delle novelle.

Nell’introduzione, Boccaccio descrive i terribili anni della peste e di come l’epidemia abbia distrutto tutte quelle norme sociali, quegli usi e quei costumi che gli erano cari. Al contrario, i dieci ragazzi creano una sorta di realtà parallela, per dimostrare come l’uomo, grazie all’aiuto delle proprie forze e della propria intelligenza, sia in grado di dare un ordine alle cose.

A questo capolavoro si è ispirata Uchida Yoko per il suo progetto “Decamerone 2020” (ospitato sul sito della casa editrice Hojosha) in cui raccoglie i racconti dei ragazzi italiani bloccati in casa in questi giorni di reclusione forzata, per far conoscere anche in Giappone la situazione italiana in tempo reale.

Da Venezia, Torino, Milano, Bologna, Roma, Montereggio, la Sicilia, la Sardegna come trascorrono le giornate i quarantenati del 2020?

Da parte dell’Istituto Italiano di Cultura di Tokyo, ringraziamo i ragazzi che stanno partecipando al progetto. Non c’è un modo “giusto” o “migliore” di vivere la quarantena e tutto quello che porta con sé. I vostri racconti lo ricordano anche a noi. 
Di questi tempi un giapponese vi direbbe 頑張って!(“ganbatte!”), che si può tradurre con “tieni duro!”, ma che ha origine in una frase che significa “tenere gli occhi ben aperti” oppure, secondo un’altra etimologia, “non rinunciare al proprio pensiero”. Nel dubbio, vi auguriamo entrambe le cose.

Per leggere (in lingua giapponese): hojosha.co.jp/free/decameron2020_02

Uchida Yoko, giornalista, scrittrice e traduttrice, si occupa da sempre dell’Italia. È presidente dell’agenzia di stampa UNO Associates Inc. Ha scritto numerosi articoli e libri sull’Italia. Ricordiamo, tra le ultime pubblicazioni, i due libri Montereggio. Vicissitudini dei librai viaggiatori da un paesino (Hojosha, 2018, vincitore del) e Un’altra storia da Montereggio (Hojosha, 2019). Nel 2011, ha ricevuto il “Japan Essayist Club Award” e il “Kodansha Essay Award” per il libro La casa di Gino. 10 Paesaggi. Nel 2019 ha ricevuto il Premio Umberto Agnelli al giornalismo.



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Filed under: Storie italiane イタリアの小さな物語,お知らせ — イタリア文化会館東京 10:00

ちょっぴりイタリア・オペラ〜ヴェルディ《ナブコドノゾル》

ヴェルディ《ナブコドノゾル》第3幕よりヘブライの奴隷たちの合唱 「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」

Verdi NABUCODONOSOR (NABUCCO) Atto terzo Coro di schiavi Ebrei “Va, pensiero, sull’ali dorate”

1842年初演当時の台本

世界中がコロナウイルスに苦しんでいます。

ご存知のようにイタリアは、大変な苦難の中にあります。

そこで今回は、アリアではなくイタリア人にもっとも愛されているオペラ合唱曲と言っていい《ナブコドノゾル》(ナブッコ)第3幕の「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」をご紹介します。

旧約聖書に題材を得たこのオペラの主役、ナブコドノゾルは日本ではネブカドザネル2世(NebuchadozanzzarⅡ)と呼ばれるバビロンの王。彼はエルサレムからヘブライ人たちを捕らえてバビロンに強制的に連行してきた「バビロン捕囚」で知られています。この合唱曲はユーフラテス川の川辺で、ヘブライ人たちが、懐かしい故郷を思って歌うもの。愛国心を歌うものとしてイタリア人に愛されています。

「 行け、想いよ」合唱部分冒頭

イタリアとイタリアの人々が、この苦難を無事に乗り越えてくれるようにとの願いを込めて。

“Va, pensiero, sull’ali dorate;
Va, ti posa sui clivi, sui colli,

行け、想いよ、黄金の翼に乗って行け、
斜面や丘でその翼を休めながら

Ove olezzano tepide e molli
L’aure dolci del suolo natal!

温暖で、とてもいい薫りの
生まれ故郷の優しいそよ風のもとへ

Del Giordano le rive saluta,
Di Sïonne le torri atterrate

ヨルダンの川岸によろしく言っておくれ
壊されたシオンの塔の数々にも

Oh mia patria sì bella e perduta!
Oh membranza sì cara e fatal!

ああ美しく、そして失われた我が祖国よ!
いとおしく、そしてつらい思い出よ!

Arpa d’ôr dei fatidici vati,
Perché muta dal salice pendi?

運命の予言者たちの金の琴よ
なぜ柳の木に掛けられて黙っているのだ

Le memorie nel petto raccendi,
Ci favella del tempo che fu!

我々の記憶再び燃え上がらせ
我々の(幸せな)日々のことを語っておくれ

O simìle di Solima ai fati
Traggi un suono di crudo lamento,

あるいはエルサレムの運命の記憶の
つらい嘆きを奏でておくれ

O t’ispiri il Signore un concento
Che ne infonda al patire virtù……

さもなくば、この苦難に耐える力を与える
主の温かいお言葉を……

(河野典子)

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